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いいたいことは少しある

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2015年 06月 30日

路地のある場所


僕の祖父と祖母は
墓地の側の
谷という場所に住んでいた。

墓地は
陸軍墓地と呼ばれている。

陸軍墓地の傍には
狭い路地があって
タクシーが通り抜けれるか
どうかという
幅しかない。

一昨日
久しぶりに
祖父と祖母が住んでいた
場所を訪ねた。

僕が幼い頃見た風景と
今の風景は
ほぼ変わらない。

はるか昔の風景が
今も変わらず
残っているのは
なんとも不思議だ。

記憶と現実とが
両立している。

路地には
初夏の照り返しがあり、
静かにたたずんでいた。

幼い頃
留守宅に
ひとり
残った
記憶があります。

静かにたたずむ箪笥や
静かにたたずむ振り時計や
静かにたたずむ畳。

箪笥や振り時計や畳は
従順な留守宅の
家来のように
見えた。

箪笥や振り時計や畳は
何かを語りかけてくる
かのようで
決して
何も語らない。

箪笥や振り時計や畳を
じっと見て
語りかけてくる瞬間を
見逃さないように
対峙していた
そんな
幼い頃の記憶がある。

一昨日見た
路地からも
もはや幼くはない
僕にむかって
何かを語りかけて
くるかのようで
しかし何も語らない。

そんなふうに見えた。

僕はこの
路地のある場所を
愛おしく思う。

叶うことならば
この場所を機縁として
僕なりの痕跡を
残したいと
切に思う。

by kouji_kotani | 2015-06-30 22:03 | Comments(0)


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