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いいたいことは少しある

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2009年 03月 21日

矢野顕子







今も僕は自転車に乗っているけど、小学生の頃も乗っていた。だから自転車と僕の関係はそうとう長い。
自転車は風をよびよせる乗り物だから、冷たい風は冷たく、あたたかい風はあたたかく、風を、よびよせる。
坂道を自転車で斜めに下るとき、風につつまれる。
風のむこう、なじみの区画にある戸建の並び。軒先が見える。樋も見える。生垣も見える。おだやかな生活。


自転車がよびよせる風のあたたかさ。それが、春の風だ。
踏み切りの遮断された向こう側には、プラットホームから始動する電車。
線路の長い軌道、玉砂利の石と石の間。そんな場所に春はひそんでいる。

桜の木のしたには死体がうまっている、と言ったのは、だれだっけ。
ひとの血で、花弁がうすく桜色にそまっている、という意味だと理解している。
もちろんそんなことはないだろうが
桜というアイコンによって、かつての戦争で犠牲者がでたことを思い返せば、桜のしたには死体がうまっていてもおかしくはない。

春(はる) の鳥(とり)な鳴(な) きそ鳴(な) きそ あかあかと 外(と) の面(も) の草(くさ) に 日(ひ) の入(い) る夕(ゆうべ)

以前熊本にいった。季節は春だった。日がくれるのが長く、打合せを終えて、そとに出ると、まわりの建物は夕日で赤くそまっていた。
ひとはだのようなあたたかさ。夕日。南がなせるわざ。南にはこころをしめつけるものがある。
南には胸をしめつける濃厚な叙情がある。

ななきそなきそ あかあかと とのものくさに ひのいるゆうべ

by kouji_kotani | 2009-03-21 23:25 | Comments(0)


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