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いいたいことは少しある

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2014年 03月 26日

幽霊

お母さんの三面鏡がある。
誰もいない和室に静かに三面鏡はたたずんでいる。
三面鏡を見ているのは
幼い息子だ。
日が暮れようとしているのか
和室は薄暗くて
ひとりで留守をしている息子は
静かにたたずんでいる。
立ちすくむように三面鏡を見ている。




夜、カーテンを引いた。
カーテンを引いて
窓硝子から夜景を見た。
よく見ると
窓硝子にはたくさんの虫や蛾が
光を求めて寄り添っている。
羽根が細かに動いている。
蠢く虫のひとつひとつに
幼い息子は立ちくらみを覚えた。



僕が学生の頃に読んだ
北杜夫の幽霊には
少年の見る世界が
描かれていました。
少年の気持ちは常に揺さぶられ
その気持ちは
歳を重ねるにつれ
忘れていく。
幽霊は少年の記憶を
深い井戸から引き上げるように
取り戻した作品です。
僕のとても好きな小説作品で
舞台は南アルプスだったような気がします。





今日僕は夕方から松本に行きます。

by kouji_kotani | 2014-03-26 06:29 | Comments(0)


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